保険の非常口

保険料・保障内容のコスパより大切!診断書比較のすゝめ

2021年7月28日

生命保険や医療保険、がん保険などの紹介では、必ずといっていいほど保険料と保障を比較、ランキング形式で紹介されています。

ネットや雑誌のみならず、複数の保険会社を取り扱う来店型ショップ(ほけんの窓口・保険見直し本舗など)でも、保険料と保障が検討の材料となります。

保険料と保障がクローズアップされる理由は、ひとえに分かりやすいからです。

保険料が安い+保障範囲が広い=優れた保険、といった図式が、保険選びの重要なポイントであることは間違いありません。

保険は加入して終わりではなく、病気や怪我での入院・手術、死亡などにより、保険金を受け取って初めて役に立つものです。

今回は、保険金の請求手続きでもっとも大切な「診断書」にスポットをあててみたいと思います。

保険金請求で提出する診断書とは?

診断書は医師が作成するもので、自分で記入することはできません。

勝手に都合よく作成して保険金を請求すると、保険金詐欺や私文書偽造などの犯罪になります。

各保険会社では、所定の診断書が用意しています。

診断書の項目は、氏名、生年月日から始まり、入院欄、手術欄、通院欄など基本的な構成はどこの保険会社も一緒です。

生命保険協会が標準的な診断書を作成し、各保険会社が独自にアレンジを加えています。

診断書を比較するポイントは?

診断書の比較でぜひ注目していただきたいのは、「前医」と「既往症」、そして「経過欄」があるかないかです。

「前医」は、診断書を記載した病院を受診する前の病院のことです。

たとえば、お腹が痛くなって市販薬を飲んでも治らないと、まずは近所の町医者(かかりつけ医)に行くと思います。

そして町医者で原因がわからないと、大きな病院を紹介され、腹痛の原因は胃癌と診断されたりします。

大きな病院で入院・手術をして、保険金請求のため医師に診断書を記載してもらうと、前医が「町医者」となります。

「既往症」はその名の通り、これまでに罹った病歴のことです。

保険の加入時には忘れていて告知していなこともあります。

しかし、いざ具合が悪くなって病院に行くと、「医師からこれまで何か病気にかかったことはありますか?」といった質問に対し、「そういえば3年前にも一週間くらいお腹が痛くなって病院に行ったら胃潰瘍と言われました」など、保険の加入時とは違い、命がかかっているので真剣に記憶を辿ることでしょう。

病気になってはじめて、告知するのを忘れていた病気を思い出したりします。

「経過欄」は、症状の発生や治療経過・内容など、様々な情報を医師が記載できるフリースペースです。

この欄に告知義務違反につながる情報が記載されていることがあります。

たとえば、「○○年○月に腹痛を主訴○○病院を受診」とか「糖尿病にて血糖コントロールの経過観察中に脳梗塞を発症」、「○○年前に大腸ポリープ切除、その後年一回検査を実施」といった感じです。

「前医」「既往症」「経過欄」はなぜ重要?

保険会社は提出された医師の診断書をもとに、保険金の支払い可否を判断しています。

保険加入のときに記載した告知書と診断書の内容に相違がないか、「前医」「既往症」「経過欄」などを念入りにチェックします。

仮に、胃癌で保険金を請求した人が、既往症欄に「胃潰瘍」と記載されていたとします。

もし「胃潰瘍」を告知していなかった場合、告知義務違反となり保険金は支払われず、契約は解除されてしまいます。

ちょっとした腹痛や頭痛など、大したことがなかったと思っていたとしても、病院に行ったり薬を処方されたりしたならば、きちんと告知書に記載しておかないと、保険金請求の時に思いもよらぬトラブルが発生します。

なぜなら、保険会社は診断書に「前医」「既往症」「経過欄」の欄を設けることによって、告知義務違反による不正請求防いでいます。

言い換えれば、保険金請求に際してマイナスの情報を集めているのです。

もし仮に、「前医」や「既往症」の欄がなかったとしたら、どうでしょうか。

保険会社としては、告知義務違反に該当するかどうかの判断材料を失うことになります。

経過欄など他の内容に問題がなければ、通常はあえて「前医」や「既往症」を調査・確認することなく、支払い手続きを行います。

契約者(みなさま)からすると、「前医」「既往症」「経過欄」は、ないことが一番です。

理由は、保険金を支払うのに際して、「前医」「既往症」「経過欄」は不要な情報だからです。

なお、注意点として、診断書の「前医」や「既往症」がなかったとしても、「慢性胃炎」や「既往帝王切開」、「胃癌術後」などの傷病名で保険金請求の場合、告知義務違反の可能性が高いので、保険会社が病院へ調査をするケースもあります。

保険業界の方針

監督官庁の指導により、”適切なお支払い”実現のため、契約者に有利な取扱いとする動きが広がってきており、診断書から「前医」「既往症」「経過欄」をなくしている保険会社もあります。

告知義務違反が判明して、お客様にお支払いできない旨をお伝えすると、「なんだかんだ理由を付けて、払いたくないんだろ」といったクレームを受けますが、それは大いなる誤解です。

一般的な生命保険会社でしたら、今月は支払件数○万件以下、保険金支払総額○○億円以下必達といったような、保険金支払を制限するようなノルマは存在しません。

むしろ、何とか理由を付けて保険金を支払うことはできないか、といった姿勢になりつつあるるのです。

まとめ

義理・人情・プレゼントなどGNP営業と呼ばれるしつこい勧誘や保険金の不払い問題などで、とかくイメージの悪い保険業界ですが、時代の流れとともに、街中に来店型ショップができたり、善意の契約者を保護するため、保険金支払基準、診断書も変化してきています。

もっとも、保険金の支払基準や診断書には、保険会社毎に多少の違いがあります。

一般のみなさまが詳しく知ることは難しいですが、各保険会社の”診断書”はホームページや、親切な来店型ショップ・営業担当者であれば、知っている範囲でいろいろ教えてくれることもあります。

保険の加入に際して、保険料や保障内容の比較も重要ですが、ぜひ「診断書」についても比較することをおすすめいたします。

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