
うつ病だけど死ぬわけじゃないし、告知義務違反しても大丈夫!
精神病などの病歴を告知義務違反して、団体信用生命保険(以下、団信)に加入する人は少なくありません。
フラット35以外の住宅ローンは、金融機関(銀行)によって団信加入が必須です。
夢のマイホーム取得に際して、やむをえず告知義務違反をして住宅ローン契約をするケースもあるでしょう。
では、告知義務違反をしても保険金は支払われるのでしょうか。
この記事では、団員・住宅ローンで告知義務違反ばれた人の末路、3つの事例を紹介します。



団信の告知内容
団信の主な告知内容は、次の4つです。
①最近3ヶ月以内に、医師の治療(診察・検査・指示・指導を含みます)・投薬を受けたことがありますか
②過去3年以内に下記の病気で、手術を受けたことまたは2週回以上にわたり医師の治療(診察・検査・指示・指導を含みます)・投薬を受けたことがありますか
心臓・血圧 : 狭心症、心筋こうそく、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症
脳 : 脳卒中(脳出血・脳こうそく・くも膜下出血)、脳動脈硬化症
精神・神経 : 精神病、神経症、てんかん、自律神経失調症・アルコール依存症
肺・気管支 : ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核
胃・腸 : 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎
肝臓・すい臓 : 肝炎(肝炎ウイルス感染を含む)、肝硬変、肝機能障害・すい炎
腎臓 : 腎炎、ネフローゼ、腎不全
目 : 緑内障、網膜の病気、角膜の病気
新生物 : 肉腫、白血病、腫瘍、ポリープ
そのほかの病気 : 糖尿病、リウマチ、膠原病、貧血症、紫斑病
女性にのみ告知 : 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫、乳腺症
③手・足の欠損または機能に障害があるか、または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか
④過去1年以内に※健康診断・人間ドックを受けて、下記の臓器や検査の異常(要再検査・要精密検査・要治療を含みます)を指摘されたことがありますか
※健康診断とは、勤務先などで毎年受診する診察・検査です(心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・胆嚢・子宮・乳房・血圧測定・尿検査・血液検査・眼底検査)
告知義務違反による解除
契約日から2年以内に告知義務違反が判明した場合、保険会社は契約を解除することができます。
団信の契約が解除されると、銀行からは住宅ローンの一括返済が求められます。
ほとんどのケースで告知義務違反が判明するのは、保険金を請求したときです。
団信加入時(住宅ローンを契約時)に、告知義務違反を調査されることはまずありません。
告知義務違反がばれると、死亡しても保険金が支払われず、銀行からローン残債の一括返済を求められます。一括返済できなければ、マイホームを手放す=任意売却か競売、家族は住む家を失ってしまいます。。



団信の自殺免責期間は1年
一般的な生命保険ですと、自殺免責期間は3年です。
一方、団信の自殺免責期間は1年です。
マイホームを購入しようとする人々は、収入も安定しており、自殺リスクも少ないことが理由として挙げられます。
告知義務違反をした人の末路、3つの事例
それでは、団信で告知義務違反の事例を3つ紹介します。
事例① 精神系疾患(うつ・パニック障害など)の通院歴があるAさんのケース
契約日 2020年1月1日
告知事項 2018年1月~2月に精神病で心療内科へ通院歴あり(告知事項②に該当)
支払事由 2021年12月に首つり自殺
Aさんが首つり自殺をしたのは2020年12月であり、契約日(2020年1月1日)から1年を経過しています。
そのため自殺免責には、該当しません。
もし告知義務違反により契約は解除されたら、死亡保険金は支払われません。
ローン残債は遺族が支払うことになります。
ローン残債は一括返済を求められます。遺族が返せないと、物件は競売にかけられ、住む場所までも失ってしまいます。
夢のマイホーム生活が泡と消える、まさに天国から地獄ですね。


事例② 精神系疾患(うつ・パニック障害など)の通院歴があるA助さんのケース
契約日 2020年1月1日
告知事項 2018年1月~2月に精神病で心療内科へ通院歴あり(告知事項②に該当)
支払事由 2023年5月に首つり自殺
事例②では、契約日(2018年1月1日)より2年経過後に首吊り自殺しています。
契約後2年を経過すると、告知義務違反による解除権は消滅します。
そのため、自殺&告知義務違反であっても、保険金は支払われます。
なお、事例①・②に共通することですが、首つり自殺を図って死にきれず、脳死状態となった場合は最悪です。
脳死状態のため、高度障害保険金が考えれますが、自殺未遂による脳死状態は高度障害保険金の対象外です。
自殺未遂による高度障害は、契約日より何年経過していても支払われません。
家族は住宅ローンの支払に加え、医療費(全額自己負担)にも苦しむことになり、自己破産は免れない状況に陥ることでしょう。
自殺で死に損なってしまうと、地獄へまっしぐらですね。
事例③ B型肝炎キャリア・Mさんのケース
契約日 2020年1月1日
告知事項 半年に1回、B型肝炎の定期検査を実施(告知事項②・④に該当)
支払事由 2021年5月に脳卒中で死亡
本来、MさんはB型肝炎キャリアのことを告知していれば、団体信用生命保険に加入できませんでした。
しかし、Mさんの死亡原因は、B型肝炎とはまったく因果関係のない「脳卒中」です。
そのため、死亡保険金が支払われ、住宅ローンは消滅します。


団信に加入できない人はどうすればいい?
団信に加入できなければ、住宅ローンを契約することはできません。
かといって、現金で一括購入できる人はごくわずかです。
選択肢として考えられるのは、次の3つかマイホームを諦めるかです。


①ワイド団信に加入
通常の団信よりも、引受基準が緩和されています。
デメリットは金利が0.3%程度上乗せされること、および取扱い金融機関が限られることです。
②フラット35を利用
フラット35は団信の加入が義務付けられていません。
フラット35を利用し、通常の生命保険で加入できるかどうか、手あたり次第検討することです。
死亡保険金額を、ローン残債に合わせた収入保障保険の活用がおすすめです。
③告知義務違反をして団信に加入
あまりにもリスクが大きく、おすすめできません。
告知義務違反をしても保険金が支払われる人がいるのは、嘘偽りのない事実です。
しかし、住宅購入という人生最大の買い物で、一か八かの丁半博打をするのは、無謀極まりないと思います。
まとめ
人生で最大の買い物といわれるマイホームには、住宅ローン・団信はつきものです。
仮に大企業に勤めていようと、年収が多かろうと、健康でなければ住宅ローンを組むのは難しくなってしまいます。
心や体に病気を抱えている人は、安易に告知義務違反をすることなく、複数の金融機関を検討するか、住宅ローンの専門家に相談することをおすすめいたします。